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2015年3月17日に発生した磁気嵐(“St. Patrick's Day Event”)について

3月17日~21日にかけて発生した地磁気嵐及び関連現象の概要は以下の通りです。
  • 地磁気嵐概況
    • 開始:3月17日04時45分UT(日本時間:13時45分)
    • 終了:3月21日15時UT頃(日本時間:3月22日0時頃)
    • 嵐の大きさ:約237nT(水平成分最大変化量)、K=7(最大K指数)
  • 静止軌道環境概況(NOAA GOES13,15衛星高エネルギー電子(2MeV以上)観測より)
    • フラックスが高い状態(1万(個/cm2/s/sr)以上):3月19日09時40分UT(日本時間:18時40分)~3月25日頃
    • フラックスがやや高い状態(1千~1万(個/cm2/s/sr)):3月25日頃から29日頃
  • 電離圏概況(NICT国内電離圏観測網より)
    • 正相嵐:3月17日09時UT頃(日本時間:18時頃)~同日21時UT頃
    • 負相嵐:3月17日21時UT頃(日本時間:18日06時頃)~
今回の地磁気嵐は、その発生時期から、“St. Patric's Day Event”と名づけられました。現在、国内外の研究者によって、現象の分析が精力的に進められています。

図1:柿岡K指数のプロット
柿岡K指数

図2:静止軌道フラックスのプロット

図3:電離圏データのプロット


サロベツ

国分寺

沖縄

情報通信研究機構による地磁気活動予報と結果

3月16日

●CME現象の地球への到来予測
  • 15日に発生したCME現象の地球への到来予測を実施。
  • CME現象の原因:活動領域12297で3月15日に発生したCクラスフレア
  • 地球への到来予測時期:
  • NICT: 3月17日~18日頃(SOHOコロナグラフ画像の解析より)
  • NOAA: 3月17日遅く~18日未明(太陽風モデル(ENLIL)より)

活動領域12297の黒点画像

活動領域12297で発生したCクラスフレア

活動領域12297の磁場構造

パーシャルハロー型のCME

NOAA・NASAの太陽風シミュレーション

NOAA・NASAの太陽風シミュレーション

●コロナホールからの高速太陽風の到来予測
太陽面南半球のコロナホール(B)からの高速太陽風到来予測を実施。
高速太陽風の地球への到来予測時期:3月17日から20日

●地球近傍の太陽風の現況に基づく地磁気活動予測
予報会議時に地球近傍の太陽風速度と磁場強度の増加が確認され、コロナホールからの高速太陽風の到来が早まったと判断。特に太陽風磁場の南北成分が強い南向きの状態(-12nT)となっていたため、今後、地磁気は「やや活発(K=4)」になると予測。
○地磁気活動の結果
太陽風速度の増加と、太陽風磁場の南北成分が一時かなり強い南向きの状態となり、我々の予測より一段階上の「活発(K=5)」な状態となった。

3月17日

●CME現象の地球への到来予測
16日と変更無し。
●コロナホールからの高速太陽風の到来予測
16日にコロナホールからの高速太陽風の影響が到来したと判断し、引き続き3月20日まで影響すると予測。
●地球近傍の太陽風の現況に基づく地磁気活動予測
3月17日04:00(UT)頃に衝撃波が到来し、太陽風速度は420 km/s→500 km/sへ上昇、磁場強度は10 nT→25 nT(非常に強い)へ上昇。地磁気活動の現況を鑑み、今後も「活発(K=5)」になると予測。
○地磁気活動の結果
太陽風速度が650 km/sまで上昇し、太陽風磁場の南北成分が非常に強い30 nTに達したため、3月17日06時から08時(UT)に地磁気指数の最大値がK=7となり、我々の予測より2段階上の「非常に活発(K=7)」な状態となった。 当機構は17日09:00UT(日本時間:18時00分)に臨時情報として磁気嵐の発生を発信。その後、18日03:10UT(日本時間:11時00分)に再度臨時情報として地磁気の最大変化量を通報。  また、17日09:00UT(日本時間:18:00分)以降、日本全域で正相嵐が発達し、18日未明には北海道で低緯度オーロラと思われる増光が観測された。

3月18日

●CME現象の地球への到来予測
CMEが到来し、通過中であると判断。
●コロナホールからの高速太陽風の到来予測
現在、CME及び太陽面南半球のコロナホールの影響下にあり、高速太陽風が引き続き3月20日まで影響すると予測。
●地球近傍の太陽風の現況に基づく地磁気活動予測
太陽風速度は650 km/s から500 km/s前後に推移。磁場強度は25 nTから10 nT へ下降。今後はコロナホールの影響によって地磁気がやや乱れると予想し、「やや活発(K=4)」になると予測。
○地磁気活動の結果
太陽風速度は700 km/sに上昇し、磁場の南北成分が一時 10 nT となったため、我々の予測より1段階上の「活発(K=5)」な状態となった。電離圏では、強い負相嵐が観測された。